秋田県立病院機構について
about
理事長挨拶


この度、2025年4月より、秋田県立病院機構理事長を拝命いたしました。一言、ご挨拶申し上げます。
私は2014年4月から秋田大学脳神経外科教授に着任し、以来、今日まで同科および秋田県の脳外科地域医療の充実に努めて参りました。同門会のご協力、若手の成長と新しい入局者を背景に、従来の脳血管障害や脳腫瘍等の診療に加え、脳血管内治療専門医の増加と県内均てん化、分子生物学や頭蓋底手術を取り入れた最先端脳腫瘍診療、不在であったてんかん専門医や深部脳刺激外来などを実現することができましたが、まだまだ道半ばでもあり、今後の発展に期待しているところです。一方、秋田県立病院機構傘下の秋田県立循環器・脳脊髄センターとの関係では、教授就任後から徐々に人材交流等を進め、最近では秋田県立循環器・脳脊髄センター脳神経外科・脊髄脊椎外科医師のうち6名が秋田大学脳神経外科からとなっています。
さて、秋田県立病院機構は、2009年4月、秋田県立脳血管研究センターと秋田県立リハビリテーション・精神医療センターを運営する組織として設けられました。さらに歴史をさかのぼれば、1968年12月の秋田県立脳血管研究センター開設が端緒といえます。その後の秋田県立脳血管研究センターの脳神経外科手術、放射線・核医学等の領域における世界的な活躍は目覚ましいものがありました。
1997年4月には、リハビリテーション科と精神科医療を提供する病院として秋田県立リハビリテーション・精神医療センターが開設されました。現在までに、精神科救急の全県拠点病院指定、秋田県高次脳機能障害相談・支援センター、秋田県認知症疾患医療センター等が設置され、秋田県に欠かせない病院になっています。
1990年代後半以降、病院経営の厳しい時代となり、両センターも改革を求められ、数年以上にわたる検討の結果、2009年4月に地方独立行政法人として秋田県立病院機構が設立されました。その後、循環器部門の拡充に伴い、2019年には秋田県立循環器・脳脊髄センターに改称されました。その後の新型コロナ禍を経て、経営再建の必要性がさらに高まり、2024年秋、秋田県立病院機構の運営、両センターへの人材派遣などの面で、秋田大学からより一層の協力を得ていくことが県より発表されました。
私自身、1996年に秋田県立脳血管研究センターに勤務し「世界の脳研」の一端を垣間見た経験があることや、従来から脳神経外科領域での人材交流をしてきたこともあり、この度の理事長就任にあたっては、大きな責任を自覚するとともに、もてる力を尽くす覚悟です。
当面の課題は経営改善ですが、しかしそのためには、否、そのためにこそ、両センターでの医療そのものの充実が一義的に重要と考えています。県民に必要とされ、満足が得られるような、医学的にも人間的にも良質な医療を提供することが最も重要です。秋田大学のご支援を得つつ、職員一丸となってこの実現に邁進します。
また、人口減少、少子高齢化などが進む秋田県では、各病院の努力だけでは問題解決に至らないことも多く、地域医療を全体として考える視点が必要です。秋田県立病院機構は、他の医療機関と透明性をもって連携し、望ましい地域医療体制の構築に貢献していきます。
医療が初めて生まれた時代から、つい100年ほど前まで、結局のところ医療者は、患者のそばにいて手やお腹をさすることしかできませんでした。しかしこれこそが医療の本質であり、どんなに機器や薬剤が発達しても変わらないこと、忘れてはいけないことと思います。秋田県立病院機構の両センターでは、そのような全人的な視点の上に、時代に即した医療を積み重ねて参ります。
県民の皆様、患者さんには暖かいご支援と、忌憚のないご意見をいただければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。
2025年4月 地方独立行政法人秋田県立病院機構 理事長 清水宏明